乳海撹拌

アンコール・ワット第一回廊の東面南側に、乳海攪拌の壁画がある。横幅47mの大壁画だ。

第一回廊の中でも、人気の場所だ。

壁画中央に大きく描かれたヴィシュヌ神のところは、とりわけ多くの人が集まっている。

壁画中央のビシュヌ神が指揮を執り、クールマの甲羅に支えられたマンダラ山にヴァースキを巻き付けて、

92体のアスラが頭側を、88体のデーヴァが尻尾側を曳いて、大海をかき混ぜている。

ビシュヌ神の頭上には、インドラ神?と144人のアプサラスが舞い、

足もとの水中には、ワニや魚が泳いでいる。

この乳海攪拌の物語は、ヴィシュヌ・プラーナやバーガヴァタ・プラーナ、ラーマーヤナ、マハーバーラタに見出される。これらの物語に出てくる人物などは物語によって幾分異なる。

ヴィシュヌ・プラーナに登場するのは、ドゥルヴァーラ仙、インドラ、ブラフマー、ヴィシュヌ、アスラ、デーヴァ、マンダラ山、ヴァースキ、クールマ、スラビー(聖牛)、ヴァルニー(酒の女神)、パーリジャータ(天界の樹木)、アプサラス、ソーマ、ラクシュミー、ダヌヴァンタリ、アムリタを入れた壷などである。

物語には、さまざまな神などが出現するが、アンコール・ワットの壁画には、インドラ?、ヴィシュヌ、アスラ、デーヴァ、マンダラ山、ヴァースキ、クールマ、アプサラスしか見られない。

物語の主題であるアムリタを入れた壷も描かれていない。

反面、乳海攪拌の物語では登場しないラーマーヤナ物語のハヌマーンかスグリーヴァが刻まれている。(2012/12/29)