天国と地獄

アンコール・ワット第一回廊南面の東側に全長約66メールの「天国と地獄」の壁画がある。

壁画は3層に分かれていて、上層には「王や王の家族の天国への道」が、中層は「地上の王族や従者たち」、下層は「地獄」が、西から東に向かって続く。

場面としては天国の宮殿シーンが37箇所あり、32地獄に比べ多いのだが、首枷をつけられたり、棒で殴られたり、火あぶりになる地獄のシーンに目を奪われる。

天国と地獄を分ける帯などに書かれた場面を説明する36個所の碑文は、エモニエとセデスによって解読されている。

最初の碑文は、従者と王の家族が中段へ上っていく場面の日傘と日傘の間に刻まれている。また、地獄(naraka)は、下層の地獄の段で一番最初に木が描かれているところの上部にある帯に書かれている。(2013/05/21)

参考図書:

Sacred Angkor The Carved Reliefs of Angkor Wat Vittorio Roveda

佛教藝術153号 アンコール・ワットの第一廻廊に見る天国と地獄図の解釈P81〜94 伊東照司

アンコール ワットの彫刻 第三章 天界と地獄P39〜58 伊東照司

天国と地獄
番号 碑文の地獄名 碑文 地獄名 描かれた場面
01 アヴィーチAvici 無間地獄 山の下に寝かされ、山の重さに押しつぶされる。
02クリミニチャヤKriminikaya 虫塚地獄 虫畑へ人を投げ入れている。
03ヴァイタラニー河Vaitarani 剃刀地獄 首かせの3人。長い棒を口に差し込まれる2罪人。
04クータ・シャールマリKutashalmali 棘の木磔地獄 4人の獄卒によって磔にされた3人の罪人。
05ユグマパルヴァタYugmaparvata 双山地獄 山と山の間に2罪人を挟み込む。
06ニルシヴァーサNirucchvasa 窒息持続 木に縛られた人が何本もの縄で縛られ、獄卒に口を塞がれている。
07ウチヴァーサUcchvasa 悲鳴地獄 木に縛られた二人に獄卒が弓矢を射っている。
08ドラヴァットラブDravattrapu 鉛液地獄 液中に横たわる二人と投げ込まれようとしている人。
09タプタラークサーマヤTaptalakshamaya 漆熱湯地獄 煮えたぎる容器に投げ込まれた5人の顔が見える。
10アスティバンガAsthibhanga 骨砕き地獄 二人の獄卒が罪人を折り曲げげて砕こうとしている。
11クラカチャチェーダKrakaccheda 鋸挽き地獄 獄卒が女の顔を切っている。
12プーヤプールナラッダPuyapurnahrada 膿の湖地獄 獄卒が膿の湖に人を投げ込んでいる。
13アスルクプールナラッダAsrikpurnahrada 血の湖地獄 体を逆さにされて湖に投げ込まれている。
14メードーラッダMedhoharada 血漿湖地獄 波を打つ水溜りに人が浸けられている。
15ティークスナヤスツンダTikshnayastunda 飢えの地獄 腹の出た罪人を棒で打ち付けている。
16アンガーラニチャヤAngaricaraya 炭火地獄 一人が炭火の上に横たわり、二人が投げ込まれる。
17アムバリーサAmvarisa 揚鍋地獄 鍋から両足だけが見える。もう一人が頭から投げ込まれる。
18クムビーパーカKumbhipaka 煮鍋地獄 獄卒に頭を押さえられ鍋から出られないようにされている。頭から投げ込まれる。
19ターラヴルクサヴァーナTalavrksavana 多羅樹の密林地獄 逆さにされて棒で打たれている。
20クスラダーラパルヴァタKshuradharaparvata 小刀地獄 人を両手で抱え上げ山に投げ入れる。山の中に木に縛られた人がいる。
21サンターパナSantapana 炎熱地獄 火の中へ人を獄卒が投げ入れている。
22スーシームカSucimukha 針地獄 地面に横たわる人々の上に人を投げ込んでいる。
23カーラスートラKalasutra 死の縄地獄 獄卒が両端を支た長い棒に縄で縛られた人を火あぶりにする。
24マハーパドマMahapadma 大蓮華地獄 棒で打ったり、弓矢を射っている。木下に火が燃えている。
25パドマPadma 蓮華地獄 ハンマーで口などに針を打ち込んでいる。
26サムジーヴァナSanjivana 等活地獄 人を逆さにして、棒で叩いている。
27不明    舌を抜かれ、口に棒を突っ込まれている。
28不明    棒で打たれている。くぎ抜きで舌をもぎ取られている。
29シッタShita 大寒地獄 胸に両手を当てて震えている。
30サーンドラタマスSandratamah 暗黒地獄 舌を抜いている。
31マハーラウラヴァMaharaurava 大叫喚地獄 磔の4人にくぎが体中に打たれている。
32ラウラヴァRaurava 叫喚地獄 人を横にして首を絞めている。